ノルドストリーム
ノルドストリーム 1 | |
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ノルドストリーム 1の地図
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位置 | |
国 |
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起点 | ヴィボルグ, ロシア |
経由地 | バルト海 |
終点 | グライフスヴァルト, ドイツ |
一般情報 | |
輸送 | 天然ガス |
出資者 | Gazprom, E.ON, Wintershall, Gasunie |
運営者 | Nord Stream AG |
完成予定 | 2012 |
技術的情報 | |
全長 | 1,222 km (759 mi) |
最大流量 | 550億立方メートル |
口径 | 1,220 mm (48 in) |
圧縮ステーション数 | 1 |
圧縮ステーション | ヴィボルグ |
ノルドストリーム 2 | |
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ノルドストリーム 2の地図
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位置 | |
国 |
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座標 | |
方向 | east–west–south |
起点 | Ust-Luga, Russia |
経由地 | Gulf of Finland and Baltic Sea |
終点 | Lubmin near Greifswald, Germany |
一般情報 | |
輸送 | 天然ガス |
出資者 |
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運営者 | Nord Stream 2 AG |
完成予定 | unknown[1] |
技術的情報 | |
全長 | 1,230 km (760 mi) |
最大流量 | 55 billion m3/a (1.9 trillion cu ft/a) |
口径 | 1,220 mm (48 in) |
圧縮ステーション数 | 1 |
圧縮ステーション | Slavyanskaya |
ノルドストリーム(独: Nord Stream、露: Северный поток/Severny potok)は、欧州のバルト海の下をロシアからドイツまで走る海底天然ガスパイプラインのシステムである。名称について、ノルドには「北」、ストリームには「流れ」という意味がある。
概要
ノルドストリーム1はロシアの国営企業ガスプロムを大株主とするノルドストリームAGが所有・運営し、ノルドストリーム2はガスプロムの100%子会社であるノルドストリーム2 AGが所有・運営している。
ノルドストリーム1はロシア北西部のヴィボルグからドイツ北東部のグライフスヴァルト近郊のルブミンまでの2本のパイプラインにより形成される[2]。また、ロシア北西部のウスチ・ルーガからルブミンまでの2本のパイプラインはノルドストリーム2と呼ばれる。ルブミンでは、ノルドストリーム1は、ドイツ東部のチェコ国境にあるオルバーンハウへのOPALパイプラインと、ドイツ北西部のブレーメン近郊のレーデンへのNELパイプラインに接続されている。
ノルドストリーム1の第1ラインは2011年5月までに敷設され、2011年11月8日に開通した[3][4]。ノルドストリーム1の第2ラインは2011年から2012年にかけて敷設され、2012年10月8日に開通した。全長1,222km(759mi)のノルドストリーム1は、ランゲルド・パイプラインを上回る世界最長の海底パイプラインとなった[5][6]。
2018年から2021年にかけてノルドストリーム2の敷設が行われ[7]、2021年6月にノルドストリーム2の第1ラインが、2021年9月に第2ラインが完成した。
ノルドストリーム1の年間総ガス容量は550億m3(1兆9000億cu ft)であり、ノルドストリーム2の建設により、この容量は合計1100億m3(3兆9000億cu ft)と倍増する見込みであった[8][9][10]。しかしロシアのプーチン大統領がドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国を承認すると表明したことを受けて、この決定が領土保全と国家主権の尊重という国際法の原則に反する行為であるとして、ドイツのオラフ・ショルツ首相は2022年2月22日にノルドストリーム2の認証作業を停止している[11][12]。これによりノルドストリーム2は完成したものの稼働に至っていない。
ノルドストリームという名称は、ロシア国内の陸上パイプラインへの給電や、西ヨーロッパでのさらなる接続を含む、より広いパイプラインネットワークを指すこともある[13]。
背景
2005年の時点で年間3300億m3の天然ガスを輸入していたヨーロッパは、2015年までにさらに2000億m3の上積みが必要となると予想されていた[14]。
豊富な天然ガスを産出するロシアは、ヨーロッパへの天然ガス供給の経由国でありながらたびたびロシアと衝突していたウクライナ(「ロシア・ウクライナガス紛争」を参照)とベラルーシを迂回するルートを求めていた[15]。それは安定した天然ガスの供給を求めるヨーロッパにとっても同じだった。一方でポーランドのラダスラフ・シコルスキー外相のように、公然と環境問題やエネルギーの対露依存を危惧する声もあった[16]。
しかし脱原発をはかっていたドイツにとってロシアの天然ガスは重要なものであった。2005年の協定では、独大手のBASFと露ガスプロムとの提携強化や、ユジノルスコエの天然ガス田開発への参加が盛り込まれるなど、エネルギー問題において密接な独露関係が目指されている。
エネルギーの対露依存度を下げたいEUが主導しているラインである「ナブッコ・パイプライン」のガスの供給元探しが難航しているのに対して、ロシアの国営企業であるガスプロムが推進した「ノルドストリーム」は2011年11月8日に稼働を開始し、EUへの天然ガスの供給が始まった。
進捗状況
沿岸5カ国のうち最後まで着工許可を出していなかったフィンランドが2010年2月12日に計画へ合意。2010年4月にノルドストリーム1の建設がスタートし、2011年11月8日に天然ガスの供給を開始し稼働した[17]。ノルドストリーム1の第2ラインに使用する鋼管の一部、110km分を日本の住友金属が受注・供給した[18]。
2021年9月10日、ガスプロムはノルドストリーム2の工事が終わり、パイプラインが完成したと発表[19]。
2022年1月31日、欧州委員会はノルドストリーム2を保留とした[20]。
2022年2月22日、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、ロシアが「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を承認したことを受け、ノルドストリーム2計画を停止すると表明した[21]。
2022年3月、ノルドストリーム2AGが破産を検討しているとの報道に対し、同社は「破産申請の事実はない」と説明した[22][23]。
批判
ノルドストリームプロジェクトは、パイプラインが欧州におけるロシアの影響力を強めるという懸念や、中・東欧諸国の既存パイプラインの使用料が連鎖的に削減されるという理由から、米国やウクライナ、その他の中・東欧諸国から猛烈な反対を受けている。
米国は同パイプラインがドイツを含む北大西洋条約機構加盟国に対するロシア政府の影響力を強めかねないと懸念しているため[24]、2018年7月11日、ドナルド・トランプ大統領は、北大西洋条約機構事務総長との朝食会の場でノルドストリーム2計画について触れ、「アメリカがドイツを守るために数十億ドルも払っているというのに、ドイツはロシアに(ガス代として)数十億ドルを支払っている」と批判。その場に居なかったドイツのアンゲラ・メルケル首相は、別途、ドイツは独立して決断を下しているとしてトランプ大統領の批判に反論した[25]。
2019年以降、アメリカ国会および国防省はノルドストリーム2に関与する事業体が米国の制裁の対象になると警告し、直ちにパイプラインの建設作業をやめるべきだと表明した[24]。しかし、2021年5月19日、アメリカ国務省は関連会社への制裁がアメリカの国益に反するとして、制裁を解除した。ドイツとロシア両政府はこれを歓迎する一方、ウクライナや一部のアメリカ国会議員はロシアに利するだけと批判した[26]。
また、このプロジェクトはヨーロッパのロシアへのエネルギー依存を招きかねないため、2021年4月28日に欧州議会はこのプロジェクトの工事の停止を求める内容を含む決議案を可決した[27]。
ロシアのウクライナ侵攻による影響とパイプラインの損壊
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻に対する欧米諸国のロシア制裁に反発し、ロシアはノルドストリーム1によるガス供給を大幅に削減し、保守点検を理由として8月に停止[28]。ノルドストリーム2はドイツ側の計画停止により稼働していないため、これによりノルドストリームによるヨーロッパへのガス供給はストップした。
EUはこれを、ガス供給を経済的兵器として利用したものとしてロシアを非難した。ロシアはこれに対し、制裁によってパイプライン維持に支障が出ているとした[29]。
2022年9月26日午後、バルト海のボーンホルム島近くのパイプラインでガス漏れが発生し、海面上に大量のガスが漏出した。ノルドストリーム1と2で計4本のパイプラインのうち3本が損壊したことが、運営するノルドストリームAG社により発表された[30]。現場では地震学者によって爆発が観測されており、何者かによる破壊工作の可能性が疑われている[31]。
10月3日、ガスプロム社は損壊した3本のラインのガス漏れが止まったことと、ノルドストリーム2のストリングBによるガス供給が可能であることを示唆するコメントを発表した[32]。
パイプライン内部に海水が流入したことでガス管内部が広範囲で腐食し、パイプラインの復旧が困難となる可能性が指摘されている。
脚注
- ^ “Ukraine crisis: Germany halts Nord Stream 2 approval”. Deutsche Welle (2022年2月22日). 2022年3月19日閲覧。
- ^ Kuzmin, Andrey (2019年12月21日). “Russia to go ahead with gas pipe project despite U.S. sanctions”. Reuters 2020年9月3日閲覧。
- ^ “Controversial Project Launched: Merkel and Medvedev Open Baltic Gas Pipeline”. Spiegel Online. (2011年11月8日) 2011年11月8日閲覧。
- ^ Wiesmann, Gerrit (2011年11月8日). “Russia-EU gas pipeline delivers first supplies”. Financial Times 2011年11月8日閲覧。
- ^ “Nord Stream Passes Ships and Bombs”. The Moscow Times. Bloomberg. (2011年5月5日) 2011年9月10日閲覧。
- ^ Gloystein, Henning (2011年5月4日). “Nord Stream to finish 1st gas pipeline Thursday”. Reuters 2010年5月26日閲覧。
- ^ Gardner, Timothy (2019年12月17日). “Bill imposing sanctions on companies building Russian gas pipeline heads to White House”. Reuters 2019年12月22日閲覧。
- ^ Zhdannikov, Dmitry; Pinchuk, Denis (2008年12月12日). “Russia's Gazprom to expand Nord Stream gas pipeline with E.ON, Shell, OMV”. Reuters. オリジナルの2015年6月19日時点におけるアーカイブ。 2015年6月19日閲覧。
- ^ Gurzu, Anca (2019年10月30日). “Nord Stream 2 clears final hurdle – but delays loom”. Politico 2019年12月23日閲覧。
- ^ Elliott, Stuart (2019年12月4日). “Nord Stream 2 construction in Danish waters under way: contractor”. S&P Global Platts 2019年12月23日閲覧。
- ^ “Germany's Scholz halts Nord Stream 2 as Ukraine crisis deepens”. Reuters. (2022年2月22日) 2022年2月22日閲覧。
- ^ https://www.bundesregierung.de/breg-de/aktuelles/ukraine-russland-2007106
- ^ “Nord Stream Gas Pipeline”. Gazprom. 2007年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年8月3日閲覧。
- ^ “Gazprom acts to reassure Europe on natural gas”. Newyork Times 2010年8月26日閲覧。
- ^ ウクライナが輸送量の7割、ベラルーシが3割を占めていた
“ロシアとベラルーシ、ガス紛争再燃か 納金巡りトラブル”. asahi.com 2010年8月26日閲覧。 - ^ “Nord Stream 'a waste of money', says Poland”. Euractive 2010年8月26日閲覧。
- ^ “EUの天然ガス調達戦略”. asahi.com 2010年8月24日閲覧。
- ^ “Nord Streamパイプライン向け大径溶接鋼管を受注内定”. 住友商事 2010年8月24日閲覧。
- ^ “ロシア、ノルドストリーム2完成を発表 各国反発のガス管” (日本語). www.afpbb.com. 2021年9月11日閲覧。
- ^ “欧州委、ノルドストリーム2を保留 政策に整合するか調査=副委員長”. ロイター (2022年2月1日). 2022年3月19日閲覧。
- ^ “独首相、ガス輸送管計画を停止 ロシアの親ロ派承認受け”. AFP (2022年2月22日). 2022年3月19日閲覧。
- ^ “ノルドストリーム2事業会社、破産検討 週内手続き開始も=関係筋”. ロイター (2022年3月2日). 2022年3月19日閲覧。
- ^ “「破産申請の事実はない」とノルドストリーム2事業会社”. ロイター (2022年3月3日). 2022年3月19日閲覧。
- ^ a b 「米政権、ロシアのガスパイプライン建設阻止で新たな制裁検討-関係者」『Bloomberg.com』、2021年3月19日。2021年4月15日閲覧。
- ^ “トランプ氏、独はロシアの「捕らわれの身」と批判 メルケル氏は反論”. AFP (2018年7月11日). 2018年7月11日閲覧。
- ^ 「米バイデン政権、ロシアのガス管会社への制裁を解除」『BBCニュース』。2021年5月20日閲覧。
- ^ “JOINT MOTION FOR A RESOLUTION on Russia, the case of Alexei Navalny, the military build-up on Ukraine’s border and Russian attacks in the Czech Republic” (英語). www.europarl.europa.eu. 2021年4月30日閲覧。
- ^ 「ノルドストリーム1、8月末から3日間供給停止 点検で」『Reuters』、2022年8月19日。2022年9月29日閲覧。
- ^ 「西側の制裁、ノルドストリーム1をなお阻害=ガスプロム」『Reuters』、2022年7月25日。2022年9月29日閲覧。
- ^ 「ノルドストリーム、3本のガスパイプラインが損傷 「前例ない」」『Reuters』、2022年9月27日。2022年9月29日閲覧。
- ^ 「ノルドストリームガス漏れ、破壊工作か 欧州が原因究明急ぐ」『Reuters』、2022年9月28日。2022年9月29日閲覧。
- ^ “https://twitter.com/gazpromen/status/1576901732096802817” (日本語). Twitter. 2022年10月4日閲覧。
関連項目
外部リンク
ノルドストリーム
- 公式ウェブサイト (英語、ロシア語、ドイツ語)
- Sweden and the NEGP: A Pilot Study of the North European Gas Pipeline and Sweden's Dependence on Russian Energy, (PDF) Base data report by Robert L. Larsson. June 2006
- Map of the disputed between Poland and Danmark zone (ポーランド語)
- Original letter from Poland about the disputed area of the Baltic sea bottom (PDF)
- Protect the Baltic Sea A petition demanding an independent environmental impact assessment of the Nord Stream gas pipeline project
- A. Łoskot-Strachota, Ł. Antas, Nord-Stream on the liberalizing EU-gas-market, Center for Eastern Studies, March 2010
- "Sea Change" (PDF) (Spektrum der Wissenschaft Custom Publishing, 2011)
ノルドストリーム 2
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