モーセの十戒
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モーセの十戒(十誡、じっかい、ヘブライ語: עשרת הדיברות、英: Ten Commandments)とは、モーセが神から与えられたとされる10の戒律のこと。
旧約聖書の出エジプト記20章3節から17節、申命記5章7節から21節に書かれており、エジプト出発の後にモーセがシナイ山にて、神より授かったと記されている[1][2]。
十戒の内容は神の意思が記されたものであり、モーセが十戒そのものを考え出し、自らもしくは他者に記させたものではない、とされている[注 1]。出エジプト記本文では神が民全体に語りかけたがそれが民をあまりにも脅かしたためモーセが代表者として神につかわされた、とされる。シナイ契約、または単に十戒とも呼ばれる。二枚の石板からなり、二度神から渡されている。最初にモーセが受け取ったものはモーセ自身が叩き割っている[3]。
正教会・聖公会・プロテスタント(ルーテル教会以外)の場合
- 主が唯一の神であること
- 偶像を作ってはならないこと(偶像崇拝の禁止)
- 神の名をみだりに唱えてはならないこと
- 安息日を守ること
- 父母を敬うこと
- 殺人をしてはいけないこと(汝、殺す勿れ)
- 姦淫をしてはいけないこと
- 盗んではいけないこと(汝、盗む勿れ)
- 隣人について偽証してはいけないこと
- 隣人の財産をむさぼってはいけないこと [4]
1から4までは神と人との関係であり、5から10までは人と人に関する項目(同時に刑法の根幹)である。
ユダヤ教の安息日は土曜日であるが、キリスト教ではイエス・キリストの復活の日である日曜日を「主の日」と呼び、日曜日を主日として礼拝している。
カトリック教会・ルーテル教会の場合
わたしはあなたの主なる神である。
- わたしのほかに神があってはならない。
- あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。
- 主の日を心にとどめ、これを聖とせよ。
- あなたの父母を敬え。
- 殺してはならない。
- 姦淫してはならない。
- 盗んではならない。
- 隣人に関して偽証してはならない。
- 隣人の妻を欲してはならない。
- 隣人の財産を欲してはならない。[5]
ヘブライ語聖書(タナハ)におけるモーセの十戒
古代イスラエルの人々は、自分たちの神はイスラエルをエジプトから導き出した神であるとしていた。[6] [7]字義どおりに言うと、ヘブライ語聖書では十の言葉であり、十戒に番号はついておらず、10ないしは12の戒めがひとまとまりをなしている。[8]
- 他の神々が、あなたのためにわたしの面前にあってはならない。[9]
- あなたは自分のために像を作ってはならない。[10]上は天にあり、下は地にあり、また地の下の水の中にあるもののいかなる形も。あなたはそれにひれ伏しても、それらに仕えさせられてもならない。[11]
- あなたは、あなたのヤハウェの名を、空しいこと[12]のために唱えてはならない。
- 安息日を覚え、これを聖別しなさい。
- あなたはあなたの父と母を重んじなさい。
- あなたは殺してはならない。
- あなたは姦淫してはならない。
- あなたは 盗んではならない。
- あなたはあなたの隣人に対し、偽の証言をしてはならない。
- あなたはあなたの隣人の家を欲しがってはならない。(あなたの隣人のすべてのものを欲しがってはならない。
ウェストミンスターレーニングラード写本(欽定訳参考)によるモーセの十誡
私はあなたをエジプトの地から、奴隷の家から連れてきたあなたの神יהוה(在ることが在る)です。
- 私の顔を差し置いて他の神々を思わないこと。
- 上方にある天、下方にある地、地の下の水の中にあるいかなるものをも彫像にしたり画像にしないこと。それに敬意を示したり、世話しないこと。
- あなたの神יהוה(在ることが在る)の名前を無に帰さないこと。
- 神聖なשבת(安息日)を覚えること。六日間労働し、あなたの神יהוהのשבתである七日目は労働をしないこと。
- あなたの父と母を大切にすること。
- 殺人をしないこと。
- 配偶者以外と性行為をしないこと。
- 侵さないこと。
- 他人について偽りの証を答えないこと。
- 他人に対して欲張らないこと。
脚注
注釈
出典
- ^ 出エジプト記(口語訳)#20:3
- ^ 申命記(口語訳)#5:7
- ^ 出エジプト記(口語訳)#32:19
- ^ グレース宣教会、モーセの「十戒」とは何ですか
- ^ 聖パウロ修道会・十戒とは何ですか
- ^ 岩波書店2000年旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記(出エジプト記解説、木幡藤子)P416
- ^ イスラエルの民は、荒野から荒野へと移動したとされる。(出エジプト記19-1)さほど遠い距離でないイスラエルまでの道のりをたどるのに40年ほどの歳月がかかったということは、モーセは、外国人に囲まれて生きる状況の中で、他宗教の神々との政治的な共存を図りながら進んで行ったことを意味している。また、モーセの妻も外国人であった。岩波書店2000年旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記(木幡藤子による出エジプト記の解説文、P401
- ^ 岩波書店2000年旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記P90(木幡らによる、出エジプト記20:1の注17、)
- ^ 岩波書店2000年旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記P89。従来とは異なり、他の神々の存在そのものを否定する発言ではないとしている。(出エジプト記20:3の注、木幡ら)
- ^ 像一般が禁止されている。岩波書店2000年旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記P91(木幡らによる、出エジプト記20:4の注2、)
- ^ ここでの像は他の神々の像ではなく、ヤハウェの像のこと。岩波書店2000年旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記P91(木幡らによる、出エジプト記20:4の注3、)
- ^ 人に害を与えたり傷つけるため嘘のために悪意をもって神の名を口にすること。岩波書店2000年旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記P91(木幡らによる、出エジプト記20:7の注8、)
参考文献
関連項目
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