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2019新型コロナウイルスによる急性呼吸器疾患

2019新型コロナウイルスによる急性呼吸器疾患   

出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』

このページの名前に関して「COVID-19」への改名が提案されています。議論はノートページの「改名提案(再)」節を参照してください。(2020年3月)
このページ名「2019新型コロナウイルスによる急性呼吸器疾患」は暫定的なものです。議論はノートを参照してください。(2020年2月)
当項目は感染症に関する医療について扱っています。政治・社会・経済系の話題については「新型コロナウイルス感染症の流行 (2019年-)」および「国・地域毎の2019年コロナウイルス感染症流行状況」、「2019年コロナウイルス感染症による社会・経済的影響」に記載してください。
また、「武漢」などを冠した呼称と政治的論争については「中国本土における2019年コロナウイルス感染症の流行状況#中国の対応への評価」を参照ください。
この記事は最新の出来事を記載しています。情報は出来事の進行によって急速に変更される可能性があります。(2020年2月)
ウィキペディアは出典のある情報「のみ」を提供しています。情報源がないものは匿名編集者が個人的・勝手な憶測を記載していると見なされ、即座に本文から除去されます。
2019新型コロナウイルスによる急性呼吸器疾患
 
Symptoms of coronavirus disease 2019 (COVID-19)
症候学 発熱咳嗽呼吸困難
原因 2019新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)
診断法 PCR法

2019新型コロナウイルスによる急性呼吸器疾患(2019しんがたコロナウイルスによるきゅうせいこきゅうきしっかん、Coronavirus disease 2019COVID-19[1])は、2019新型コロナウイルスSARS-CoV-2)によって発症するウイルス呼吸器疾患である。「新型コロナウイルス感染症」や「新型肺炎」、「武漢肺炎」などとも呼ばれる。2019年11月、中国武漢市で初めて検出され新興感染症となり、以降世界各地で感染が拡大パンデミック)している。

名称 

疾患名は世界保健機関(WHO)が2020年2月11日COVID-19(コビッド・ナインティーン)[注 1]命名した[3][4][5][6]。なお、元英語名の“2019-nCoV acute respiratory disease”は、WHOによって暫定的に命名されたものである。

日本法令では同年1月28日時点で「新型コロナウイルス感染症[注 2]」と定められており[7]、同年2月1日より1年間の予定で、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律感染症法)に基づいて強制的な入院などの措置を取ることができる指定感染症に指定された[7]

WHOのガイドラインと呼称に関する論争 

名称について、WHOは地域の名称や地名と結びついた中東呼吸器症候群(MERS)やスペインかぜエボラ出血熱ジカ熱などの呼称に批判的な見解を示しており、2015年に策定されたWHOの「名称決定についてのガイドライン」(Best Practices for the Naming of New Human Infectious Diseases) では、新たなヒト感染症・ウイルスの名称に地理的な位置、人名、動物や食品に関する名前、特定の文化や産業に関する名前を含むべきでないという立場をとっている[8][9][10]

一方、中華民国台湾)の衛生福利部疾病管制署では、COVID-19の簡称として「武漢肺炎」の呼称を公的文書で使用している[11]

この他、麻生太郎財務大臣[12]や米国のマイク・ポンペオ国務長官[13]らをはじめ、日米の政治家やジャーナリスト[14]の間では発生地の名前をとった「武漢肺炎」「武漢コロナウイルス」などと呼ぶべきと主張する意見もあり、中華人民共和国外交部はこれに反発している[15]

病理 

この節の加筆が望まれています。

病原体 

SARS-CoV-2に感染することによって発症する[1]

感染経路 

飛沫感染接触感染が中心とされている。空気感染は確認されていないが、エアロゾルを発生する医療処置がなされた際には感染に関与する可能性が指摘されている[16]

宿主細胞受容体 

SARS-CoV-2はSARSコロナウイルスと同じく宿主細胞のアンジオテンシン変換酵素II(ACE2)受容体に結合して感染するとみられている[17]Human Protein Atlas英語版によればACE2受容体腎臓に多く発現している[18]

通常、ACE2受容体は刺激されるとアンジオテンシンIIを分解することで血圧上昇のためのレニン・アンジオテンシン系(RA系)を阻害するが、このRA系阻害作用は臓器の保護に重要な可能性がある[19][20][21]SARSコロナウイルスではマウスでの動物実験においてACE2受容体の発現を減少させるとされ[22]新型コロナウイルス感染症の患者の血漿においてもアンジオテンシンIIが高いレベルにあるという情報がある[23]。そのため、新型コロナウイルス感染症の治療においてRA系の阻害が提案されている[24][23]

なお、高血圧患者は新型コロナウイルス感染症で重症化しやすいとされる[25]

症状と徴候 

症状は特異的ではなく、症状のないもの(無症候性)から重症の肺炎、死亡まで幅広い。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するWHO-中国合同ミッション報告書」によれば典型的な症状・徴候としては発熱(87.9%)、空咳(67.7%)、疲労(38.1%)、喀痰(33.4%)、息切れ (18.6%)、咽頭痛(13.9%)、頭痛(13.6%)、筋肉痛または関節痛(14.8%)、悪寒 (11.4%)、悪心または嘔吐(5.0%)、鼻詰まり(4.8%)、下痢(3.7%)、および喀血 (0.9%)、結膜充血(0.8%)がある[16]くしゃみ鼻水のどの痛みなどの上気道症状は少ない[26]潜伏期間については、世界保健機関(WHO)は2日間から10日間[27]アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は2日間から14日間[28]とそれぞれ推定している。

初期症状は、風邪とそっくりであるために、発症早期の段階では区別が困難である[29]。感染から潜伏期間(暫定推定値1 - 12.5日間、平均5日程度。ただし極少数ながらそれ以上の潜伏期間例報告もあり)を経た後に、微熱発熱と風邪症状が約1週間続く。新華社通信は2020年1月25日、患者の当初の症状は、肺炎に特有の発熱や咳だけとは限らず、下痢吐き気頭痛や全身のだるさなど、消化器系神経系の症状の場合もあり、早期の診断を難しくしているとして、病院の医師らが注意を呼びかけていると伝えた[30]。また特に発症早期の場合は発熱が必ずしも現れるわけではないため、発熱検知装置だけで検出できない可能性がある[31]

約1週間の初期症状期に回復しない場合は、高熱、気管支炎、肺炎の初期症状などが併発してくる。重症例では、呼吸不全が起こる。また、血液に乗ってウイルスが体内に拡散され、肝不全、腎不全、心不全脳炎もしくは中枢神経系感染、多臓器不全などを引き起こすことが確認されている[32][33][34]髄膜炎の発症も報告されており、日本国内では2020年3月7日に山梨県で確認された。髄膜炎徴候患者の髄液を採取してPCR検査したところ陽性だったという。中国本土ではウイルス性脳炎髄膜炎疑い症例が報告されているが、日本国内では初となる[35]


2月14日の横浜での緊急シンポジウムで、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、以下のように述べた[36]

軽微な呼吸器症状を見極め、感染者を早期に見つけることが重要な時期。

胸部レントゲンとCT検査の両方を実施した41歳日本人男性の症例では、CTのみで左肺の尖部と舌区に一部湿潤影を伴うすりガラス影を認めて肺炎と診断できた。レントゲンではとても見抜けない非常に小範囲な陰影だった。通常、こうした臨床像の患者にCTを撮ることは現実ではないが、背景に感染の流行という特殊な状況があったため実施してキャッチできた。

複数の軽微な症例を診察した結果、感冒症状が一週間続き、かつ倦怠感が強いという臨床上の経過は、感冒やインフルの経過と明らかに異なる。

—  国際感染症センター長・大曲貴夫 、 [36]

また、同シンポジウムでWHOの進藤奈邦子シニアアドバイザーは、次のように述べた[36]

この病気は心配しないでもいいという意見もあるが、下気道に親和性が強い。排菌のピークは、発症日から3、4日後くらい。

—  WHOシニアアドバイザー・進藤奈邦子 、 [36]

 

検査 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査統計・手法英語版」も参照

血液検査 

血液検査での確定診断は現時点で困難である。COVID-19患者において約8割にリンパ球減少がみられ、血小板減少、白血球減少がそれぞれ約3割にみられる。CRP上昇、AST上昇、ALT上昇、LDH上昇、D-dimer上昇などもみられることがある。重症例ほど異常値が現れやすい傾向にある[37]

血液中に存在する、SARS-CoV-2に対するIgM抗体やIgG抗体を検出するキットが開発され、中国ではCOVID-19の標準診断法としてガイドラインに記載されている。日本でもクラボウより販売されているが[38]、2020年3月17日現在、保険適用外である。

画像診断 

写真付きの論文[39]によれば、CT所見において一般的に両側性のすりガラス陰影と浸潤影を呈することが分かったという。また、他の早期診断に有用と思われる特徴として、結節性陰影、網状影、病変の辺縁性分布が挙げられた。一方、空洞、不連続な結節胸水貯留、リンパ節腫脹は見られなかった。初回CT検査で異常所見がなくても(すなわち陰性でも)、COVID-19の可能性を除外できるとは限らないという[40]

ウイルスの存在診断 

検査ツールの開発 

この節の加筆が望まれています。
ロシュ

2020年1月30日、スイスの製薬会社ロシュは、ウイルスの存在が浮上した時に分子診断医からなる緊急対応チームをスタートさせたと語った。提携先と協力し、スタッフがいれば数時間で診断できる検査ツールを開発した。中国では同ツールの使用に必要なハイテク装置が少なくとも150台必要なことが分かった。この検査ツールの利用に必要なハイテク装置「マグナピュア24」「ライトサイクラー480」などを増産している[41]

CDC

2020年2月6日、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、本ウイルスの検査キットを開発し、国内外の検査機関に配布をはじめたと発表した。検査キットは通常のインフルエンザの診断で使用する機器で利用でき、4時間で結果が出る。1キットで700~800の検体を診断できる。それまでは採取した検体を国内の検査機関から受け取ってCDCが診断していたが、各検査機関の中で診断できるようになり迅速化する[42]

リアルタイムPCR

DNAを増幅しながら量も測れるリアルタイムPCR新型コロナウイルスが検出できるということが報告され、WHOから25000のキットが159カ国の検査所に送られた[43]

島津製作所

2020年3月4日、島津製作所は従来のPCR検査薬に余分な成分の影響を受けないようにする薬品を加えることで前処理を省くことができる検査試薬を開発し、研究用としての供給を行うと発表した[44]

ウイルス検出手順 

国立感染症研究所が2020年2月5日に発表し、その後も改訂を続けている「病原体検出マニュアル 2019-nCoV」によれば、新型コロナウイルスの検出手順は以下のようになる[45]

検体の取り扱いは、バイオセーフティーレベル(BSL)2+でおこなう[45]PCR検査法は2019-nCoVの遺伝子領域からオープンリーディングフレーム(ORF)1aとスパイクタンパク質(S)を検出する2-step RT-PCR 法(2ステップ逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法)またはリアルタイム one-step RT-PCR 法(TaqMan プローブ法)が使用される[45]

RNAの抽出

キアゲン(QIAGEN)社のQIAamp Viral RNA Mini Kit (QIAGEN、Cat.No.52904)[46]、また、他のRNA抽出キットでもよい。

2-step RT-PCR
リアルタイム one-step RT-PCR 法(TaqMan プローブ法)
  • QuantiTect® Probe RT-PCR Kit (QIAGEN Cat#204443) [52]
  • AgPath-ID One-step RT-PCR Reagents (Thermo Cat# AM1005)[53]
  • TaqMan Fast Virus 1-Step Master Mix (Thermo Cat#4,444,432)[54]

各国の検査体制 

日本の検査体制 

厚生労働省は2020年2月18日、1日に最大3,800人のPCR検査ができる体制を整備したと発表した[55]。しかし、2月18日から2月24日の間に実施された検査件数は約6,300件で、1日平均約900件だったため、各界から批判された[56]

3月1日国立感染症研究所は「PCR検査の拡大を感染研OBが妨害している」「検査件数を抑えることで感染者数を少なく見せかけようとしている」「実態を見えなくするために、検査拡大を拒んでいる」といった主張は事実と異なり、職員や関係者を不当に扱うもので、対策へ悪影響を及ぼしていると反論した[57]

3月7日厚生労働省は、かかりつけ医が必要と考える場合は、すべての患者が検査を受けることができる十分な1日6,000件程度の検査能力を確保しているとし、3月末には8,000件を超えると発表した[58]

また、PCR検査の医療保険適用によって、帰国者・接触者相談センター(24時間対応)から紹介された帰国者、接触者外来で検査が必要とされたときは、保健所を経由することなく、民間の検査機関に直接、検査依頼を行うことが可能となった[58]。かかりつけの医者が検査が必要と判断した場合には、帰国者・接触者外来を紹介受診し、検査を行う[58]。地域の検査能力に限界があるために断られるということがないようにするとし、同時に、検査時間を大幅に短縮できる新しい簡易検査機器の開発を進めていくと述べた[58]

厚生労働省疑似症報告制度を採用している。疑似症とは「感染症を疑わせるような症状のうち、集中治療その他これに準ずるものが必要であり、かつ、直ちに特定の感染症と診断することができないと判断したもの」と定義される[59]。この疑似症報告制度によるPCR検査実施人数には、退院時の確認検査や、疑似症報告に該当しない検査、クルーズ船やチャーター便に関する検査等は含まれておらず、実際の実施総数より少ない[60]
例えば2月18日から3月11日までのPCR検査実施件数の総数は25,456件であったが、退院時の確認検査などは含まない場合は10,024件となる(下記表参照)[61]

 
  PCR検査数

(累計)

前日比 出典
3月1日(日) 2,517件 +178件 厚生労働省[62]
3月2日(月) 2,613件 +96件 同上[63]
3月3日(火) 2,684件 +71件 同上[64]
3月4日(水) 6,519件 +3,835件 同上[65]
3月5日(木) 6,777件 +258件 同上[66]
3月6日(金) 7,476件 +699件 同上[67]
3月7日(土) 8,029件 +553件 同上[60]
3月8日(日) 8,176件 +147件 同上[68]
3月9日(月) 8,286件 +110件 同上[69]
3月10日(火) 9,600件 +1314件 同上[70]
3月11日(水) 10,024件
確認検査等を含む累計 : 25,456件
(2月18日〜3月11日分)
+424件 同上[71]
3月12日(木) 10,205件
確認検査等を含む累計 : 26,950件
(2月18日〜3月11日分)[72]
+181件 同上[73]
3月13日(金) 12,060件
確認検査等を含む累計 : 28,009件
(2月18日〜3月13日分)[74]
+1,855件 同上[61]
3月14日(土) 12,919件 +859件 同上[75]
3月15日(日) 13,026件 +107件 同上[74]
3月16日(月) 13,068件
確認検査等を含む累計 : 29,122件
(2月18日〜3月14日分)[76]
+43件 同上[76]
3月17日(火) 15,151件
確認検査等を含む累計 : 32,125件
(2月18日〜3月15日分)[77]
+2083件 同上[77]
3月18日(水) 15,354件
確認検査等を含む累計 : 33,212件
(2月18日〜3月16日分)[78]
+203件 同上[78]

韓国の検査体制 

2020年3月までに韓国では21万人以上が検査を受け、現在も毎日約2万人を検査している[79]

イギリスの検査体制 

2020年3月までにイギリスでは2万9700人以上が検査を受け、1日の検査人数は1000人を超える[79]

イギリス政府の感染対策は3月12日に発表された[80]。パトリック・ヴァランス政府首席科学顧問はもはや感染を止めるのは不可能なので、感染のペースをゆっくりとし集団免疫(免疫を持つ人が増え、感染を防ぐようになること)を獲得すると明言し、「封じ込め」フェーズから感染のピークを遅らせて山を低くする「遅延」フェーズに移行するとした[80]

具体的に以下の対策をアドバイスしている。

  1. ハッピーバースデーを2回歌いながら石鹸と温水で手を洗う
  2. 熱や咳の症状がある人は1週間自宅で自己隔離
  3. また家族全員を自宅で隔離
  4. 新型コロナウイルスに脆弱な高齢者をケア→死亡率を20〜30%削減
  5. 集団免疫を獲得するまで先は長いので今からあまり頑張りすぎない
  6. 海外への修学旅行の中止や基礎疾患のある人のクルーズ船旅行の自粛も要請
  7. スポーツイベントなど大規模な集会より感染リスクが高いのは密閉空間での密接な会合

また、今封じ込めすぎて感染ピークがNHS(国民保健サービス)の繁忙期である冬に来ることを避け、一番暇な夏に来るようにコントロールする目標も示した[80]。最悪シナリオの罹患率はドイツの70%を上回る80%に設定して実行計画を立てるとした[80]

イギリス政府は休校しなかったが、その理由についてヴァランス顧問は休校の効果は13〜16週間以上の期間が必要になるが、「子供に友達と会ってもダメ、おしゃべりしてもダメと言っても実行できる可能性はゼロである」と述べた[80]。子供の発症リスクが低く、休校にするとNHSのスタッフなども子供のために欠勤しなければならないこと、今のうちに免疫を付けさせることなども理由として挙げらている[81]

アメリカの検査体制 

アメリカ合衆国では2020年1月以降、1万1079個の検体が調べられた(CDC発表)[79]。ただ、患者1人が少なくとも2つの検体を提出するのが一般的なため、検査を受けた人数は検体数より少ないとされる[79]。民間の病院での検査はCDCに報告されないケースもあり、当局は全体の把握が難しいとしている[79]

アメリカは1月、WHOが承認した検査キットの使用を断り、CDCが独自に検査を開発したが、その製造過程において欠陥が見つかり、多くの検査結果が判定不能となった[79]。3月に感染が拡大してからは、検体を取るための綿棒や手袋も不足し、CDCは「十分な器具も人も内部能力もない」「公衆衛生の研究所に対する投資が少な過ぎた」と述べた[79]

3月12日、アメリカ国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチは、現在の米国の検査体制は必要に即していない、「他の国のように、誰もが簡単に(検査を)受けられるという体制になっていない」と述べた[79]

また、ワシントン大学病院のアレックス・アダミ博士は、今回の感染症の予防、検査、治療法について「誰も実際に訓練を受けた人はいなかった」と述べ、その結果、院内感染が発生したという[79]。病院は当初、新型ウイルスに対応するスタッフは少ない方が、感染のリスクを限定できると判断していた[79]。アダミ博士は、「他の病院は私たちの例を見て、『どうすれば、もっとうまくいく?』と考えてほしい。国民には私たちの例から、後手後手に回るのではなく早め早めの対応が必要だと学んでほしい」と述べた[79]

予後 

初期の報告では重症化率が32%、死亡率が15%と高いものであったが[26]、症例の集積に伴い、現在では重症化率、死亡率はそれより低いことが判明している。WHOからの報告では軽症~中等症例が約80%、重症例が13.8%、重篤例が6.1%とされている[16]。死者の多くは、高血圧糖尿病、免疫系を損なう心血管疾患など、他の疾患を併せ持っていた[82]。また、免疫系の過剰反応であるサイトカインストームによる重篤化するケースもある[83]。死亡に至った初期症例によると、疾病の判明から死亡までの中央値は14日であり、6日から41日までの幅があった[84]

致死率・罹患率 

この節の加筆が望まれています。 (2020年3月)

感染による全体的な死亡率罹患率は分かっていない。これは、2019年から2020年現在にかけて発生した流行では致死率が時間とともに変化する可能性があることや、疾患が診断可能になるまで進行した感染者の割合が不明なためである[85][86]。しかし、予備調査で2%から3%の致死率が得られている[87]。WHOの予備調査で致命率は3%程度と推定[88]。致死率は感染者数に占める死者の割合で、2020年現在のように感染が流行している段階では、感染者数値が変動するのに応じて致死率も変動する(例えば2月6日時点で武漢の致死率4.1%、湖北省以外の地域0.17%[89]。2月17日時点で武漢の致死率3.2%[89]。2月18日時点で湖北省以外の地域の致死率は0.63%[89]など、これは治療中の重症患者が死亡するケースが増えているためとみられる[89])。

3月11日、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の長官ファウチ (Anthony S. Fauci) は新型コロナウイルス感染症の致死率について中国を含めたデータからはおよそ3%であるものの、無症状患者もいるので実際の感染者はさらに多いため、致死率はおよそ1%と推定している[90]

罹患率についてイギリスは3月12日に、最悪シナリオの罹患率はドイツの70%を上回る80%に設定して計画するとした[80](#イギリスの検査体制)。

 
  致死率 備考
SARS
(重症急性呼吸器症候群)
9.6%[88][91]-11%[92] 2002-2003年[88][91]
MERS
(中東呼吸器症候群)
35% 2012年-[93]
スペインインフルエンザ
(スペイン風邪)

(H1N1型)[94]
2.5%以上 1918-1919年。
患者数は世界人口の25-33%(5億人)、死亡者数は4,000万~1億人[95]
(日本:患者2300万人、死亡者38万~45万人)
第一波は感染性は高かったが致死性ではなかった。
第二波は10倍の致死率となり、15~35歳の若年者層において最多の致死となり死亡例の99%が65歳以下だった[95]。1997年にゲノムが分離され、H1N1型であることが確認された。
エボラ出血熱
(アフリカ)
50-89% 軍隊により封じ込め、住民を外に出さないことで収束[96]
高病原性鳥インフルエンザウイルス
(H5N1型)
30-80%[96]
(または56%[97]-60%[94])
 
季節性インフルエンザ 0.1% [98][89]
新型インフルエンザ
(H1N1型)
0.001%
(70歳以上は0.03%) [98]
2009年流行。
詳細は「2009年新型インフルエンザの世界的流行」および「日本における2009年新型インフルエンザ」を参照。
新型コロナウイルス感染症
(COVID-19)
推定致死率含む。
*0.1-1% (米保健省ブレット・ジロワー次官補[99][100])
*1%以下[101][100]
*1% (NIAID[90])
*2-3% (予備調査[87])
2020年現在流行中、各機関で分析中。

予防 

新型コロナウイルスの構造
  赤い突起:スパイクタンパク(S)[102]
  灰色の被膜がエンベロープ、主成分は脂質でアルコールや石鹸で破壊できる[102]
  黄色の付着物:エンベロープタンパク[102]
オレンジの付着物が膜タンパク質[102]。一部のCoVにはヘマグルチニンエステラーゼがある[102]
この節の加筆が望まれています。

感染経路としては、ウイルスが付着した手で鼻や目や口を触ることによる接触感染と、くしゃみによる飛沫感染がある[103]。また、中国の衛生当局は飛沫感染接触感染に加えて「閉鎖された環境で長時間、高濃度のウイルスの粒子を吸った場合」のエアロゾル感染も追加した[104]

気道が主要のウイルス伝播経路になるとみられるが、SARSコロナウイルス感染と同様、消化管および粘膜組織(結膜など)もウイルスの体内侵入方法である可能性がある[105]

下記方法で体内への侵入を防止すること。また、普段から睡眠や食事などの健康管理免疫力を高めておくことも重要である[106]

エンベロープをもつRNAウイルスのため、こまめな石鹸による手洗い、アルコール消毒も有効とされる[107]

手洗い 

流水と石鹸によりこまめに手洗いすることが推奨されている[108]。手首を回しながら爪先、指の間から手首の方まで時間をかけて洗う[109]

米国CDCは、トイレの後、食事の前、およびくしゃみや咳などをした後には、最低20秒間の石鹸と水(湯)による手洗いを勧告している。手洗いが出来ない場合は濃度60%以上の消毒用エタノールを使用すること、手の汚れは常に石鹸と水(湯)で洗い落とすこと、としている[110][111][112]

トイレや外出で汚れたあと洗わない手で鼻や目や口などの粘膜に触らないよう注意が必要となる[113]

ウイルスが付いて感染源になりやすい場所 

トイレの便座の蓋、流水レバー、蛇口、ドアノブやハンドル、エレベータのボタン、電話機、窓の取っ手、照明スイッチ、テーブル、椅子、パソコンのキーボードなどに付着しやすい[114]

ドイツルール大学ボーフムグライフスヴァルト大学病院英語版衛生研究所の研究グループによれば、病室内で患者が使用した道具に付着したSARSコロナウイルスMERSコロナウイルスは、消毒しないと平均4~5日生存を続ける可能性があるとし、「この特徴が新型コロナウイルスにもあてはまる可能性が高い」と発表された[115]

触る前に手を洗う、また、触ったあとにも手を洗うことが大切[108]

消毒 

日本厚生労働省は、消毒では消毒用アルコール(70%)や次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)が有効としている[116]

ルール大学ボーフムグライフスヴァルト大学病院衛生研究所の研究グループは、エタノール(約70%)のほか、オキシドール(0.5%)、次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)により、残存ウイルス数を1万分の1にできると発表した[115]

また食品においては、新型コロナウイルスでは不明なものの、SARSコロナウイルスでは60度で30分以上の調理が必要とされている[117]新型コロナウイルスでは不明だが、MERSコロナウイルスやインフルエンザウイルスでは特定の条件下で腸管からの感染が起こりうるという研究が存在する[118][119]

咳・くしゃみのエチケットとマスク 

感染症を予防するため、咳・くしゃみが直接人にかからないようにカバーすることが大切です。
  • 咳・くしゃみをするときはティシュなどで口と鼻を覆います。
  • 使用したティシュには病原体が付着しているため、すぐゴミ箱に捨てましょう。
  • 咳・くしゃみが続くときはマスクをつけましょう。
  • マスクは鼻と口を覆うようにつけましょう。
  • マスクをしていない時のとっさの咳・くしゃみは手ではなく、上着の内側で覆います。
  • 手で覆ったときは、すぐに手を洗いましょう。
—  東京都感染症情報センター [120]、 咳エチケットについて - 新型コロナウイルス感染症に関する情報[121]

一般的な流行疾患に対する情報であるが、マスクの捨て方について、警視庁は「マスクの外気に当たる面は、埃やウイルス等で汚れています。マスクを使い終わったらひも部分を持って外し、マスク本体には触らないようにビニール袋に入れ、口を縛って密閉してからゴミ箱に捨てましょう」と呼びかけた[122]

気温・湿度のコントロール 

加湿器などを使って50%-60%の湿度を保つことも方法の1つ[109]

新型コロナウイルスでは不明なものの、他のコロナウイルスでは低温低湿で活性状態が続き、温度20度/湿度50%で不活性化が進みやすいという屋内環境での実験結果が存在する(ただし単純に湿度の高い方が良いというわけでは無い)[123]

日本の一般的環境においては、法令上労働安全衛生法ではオフィスにおける室温17度以上28度以下、相対湿度40%以上70%以下の努力義務があるものの、2014年時点において相対湿度の法令に対する不適合率は高いものとなっている[124]

トイレおよび飲食品の管理 

中国疾病予防管理センターは2020年2月15日、新型コロナウイルスには感染経路が複数あり、(例えばノロウイルスのように)糞口・経口感染することが「急速な感染の一因だと考えることができる」と論文で発表している[125]

接触サービス、リモートワーク 

中国の外食産業は新型コロナウイルスへの対策として非接触化を進めており、非接触配達サービスや非接触レストランが登場している[126]

会社業務などではリモートワーク (テレワーク・在宅勤務) の推進が行われている[127][128]。仕事や学業を効率化し、会議なども最小化してメールでできること(特に連絡事項)はすべてメールやチャットを使用し、自宅でできる仕事は自宅で行う対策が取られる[129]

また遠隔接客ロボットも登場している[130]

集団感染・スーパー・スプレッダー 

厚生労働省は2020年3月1日、これまでの日本の集団感染(クラスター)事例にスポーツジム屋形船ビュッフェスタイルの会食雀荘スキーゲストハウス、密閉された仮設テントなどがあったとし、換気が悪く、人が密集して過ごす空間、不特定多数の人が接触する場所に行くことを避けるよう勧告した[131]

3月3日共同通信は、日本における集団感染9件では、そこからつながりのある感染者数が80人以上になることがわかった[132]。これは調査対象となった感染者260人のうち約30%を占める[132]

現在までに集団感染が疑われる事例としては、さっぽろ雪まつりでの屋台[133]、住宅設備展示会(北海道北見市)[132]、病院(東京[134]相模原市[135][136]和歌山県湯浅町での院内感染[137])、大阪のライブハウス[138] [139][140]、ライブバー(北海道)[141]名古屋市ではスポーツクラブ(感染36人)と福祉施設(感染45人)でクラスターが発生した[142]

また韓国では感染者の行動履歴の公開情報から、キリスト教会で集団感染が発生し、そのうち一人が老人福祉施設の食堂で食事をした結果、計5人が感染。さらにその福祉施設の会員の感染が病院で確認されたが、その病院で院内感染が発生したという感染経路がわかっている[143]

10人以上への感染拡大の感染源となった患者をスーパー・スプレッダーという[144]SARS重症急性呼吸器症候群)でもスーパースプレッダーがおり、また韓国のMERS流行では特定の数名がスーパースプレッダーで、1人から86人に感染させた患者もいた[145]。2020年、新型コロナウイルスシンガポールで感染し、その後多数の人にウイルス感染をもたらしたイギリス人男性をAFPスーパースプレッダーだと報道した[146]

日本でも新型コロナウイルス感染者の8割は他人に感染させていないが、残りの2割の人が1人以上の人に感染させており、その中には1人から9人へ感染させた事例(屋形船)や、1人から12人へ感染させた事例(スポーツジム)がある[147]感染症専門医忽那賢志もスーパースプレッダーにならないためには密集空間を避けるべきだとしている[147][145]

新型コロナウイルス対策専門家会議は3月9日、これまで集団感染が確認された場所は、1.換気の悪い密閉空間、2.多くの人が密集、3.近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話発声という3つが重なった場であり、このような場所を避けるよう勧告した[148]。同会議は集団感染の発生を防ぐために以下を強く推奨した[148]

  1. 換気のために窓を開ける
  2. 会場を広くし、お互いの距離を1〜2mあける
  3. 近距離での会話や発声、高唱を避ける
  4. こまめな手指衛生、咳エチケットの徹底、共用品を使わない、使う場合は十分に消毒— 新型コロナウイルス対策専門家会議,3月9日[148]

集団免疫 

集団免疫の図解
(1) 流行のピークを遅延させる
(2) ピーク時の医療への負荷を下げるために曲線を平坦化する
(3) 感染者数と健康への影響を減らす[149]

日本の新型コロナウイルス感染症専門家会議は3月2日に「感染症のなかには、大多数の人々が感染することによって、感染の連鎖が断ち切られ、感染していない人を保護する仕組みが機能できる」として集団免疫の考えに言及した[150]

3月12日にドイツ政府、英国政府は集団免疫で対策すると表明した[150]。(#イギリスの検査体制)

集団免疫についてはCDCCommunity Mitigation Guidelines to Prevent Pandemic Influenzaで説明している[149]

集団免疫は、市中感染が拡大する以前の隔離政策、またワクチンがない場合の対策として見なされている[150]

東京大学名誉教授獣医師唐木英明は「新型コロナ騒動は、集団免疫を得るまでは終わらない。そうであれば、厳しい対策により感染者をゼロに近づけようと努力するのではなく、ドイツや英国に倣つて、医療崩壊を起こさないように注意しながら、ある程度の感染を容認して、集団免疫を得ることを考えるべきではないだろうか。そんなことをしたら死亡者が増える、という反対がある。しかし、感染の速度に関わらず、感染者が国民の最低60%にならないと新型コロナ問題は終わらないのだ。重症者の治療法を早期に確立して、死亡率を低下させることが最重要の課題である。」と指摘している[150]

 

 

治療法 

この節の加筆が望まれています。

治療法の概要 

2020年春現在、本症COVID-19に対する治療法は世界中で懸命に研究され、日に日に進歩しています。Wikipediaや一般的な報道を参考にするだけでなく、厚生労働省、医師会、学会、論文サイト、製薬会社サイトなど、学術的に信頼のおけるソースで最新の情報を入手してください。

2020年1月末の時点で確立された治療法はなく[151]、主として対症療法のみが行われていた[151]

2月に入り中国国家薬監局[注 3]ファビピラビル(アビガン錠)(→ #ファビピラビル (アビガン) (抗インフルエンザ薬))を承認した[152]

日本では日本感染症学会が、2月26日、抗ウイルス薬の選択として、以下を呈示した。

(→ #医療機関の対応方法)。

同学会はまた、3月2日、吸入ステロイド喘息治療薬 シクレソニド の三例の奏効例もサイトに掲載し、大きな反響を呼んだ(→ #シクレソニド (吸入ステロイド喘息治療薬))。

製薬会社は

  1. エボラ出血熱エイズウイルス(HIV)など致死率の高い他のウイルスに対して既存の医薬品で効くものを探して転用する(以下に詳述)。
  2. 新技術を頼りに、かつてないスピードでワクチン(→ #ワクチンの開発)や抗体医薬(→ #抗体医薬の開発)その他の新薬を開発する。

という2つの戦略を進めている[153]

中国の当初の処方 

医学論文誌『ランセット』に掲載された、中国の2020年1月2日までに発症した41人の患者の研究報告によれば[154]、38人(93%)の患者に抗インフルエンザ薬のオセルタミビルタミフル)を処方した。さらに、9人(22%)の患者に副腎皮質ホルモンが全身[注 4]投与された。

中華人民共和国国家衛生健康委員会(NHC)は1月23日公表の指針で、暫定的に抗HIVリトナビル(カレトラ)、その効果を補強する経口抗ウイルス薬サキナビル(インビラーゼ)およびアルファインターフェロンネブライザーによる投与を推奨した[155][156]

また、中華人民共和国国家衛生健康委員会(NHC)は「対新型コロナウイルス肺炎診療方案(第7版)」の中で、「十.治療 (二)一般治療 3.鼻カニューラ、酸素マスク、経鼻ハイフロー酸素療法など、効果的な酸素療法をタイムリーに実施。条件があえば、電気分解水素ガス吸入器(H2/O2:66.6%/33.3%)を加えて治療をする(原文は中国語)」と水素ガス吸入療法いた治療方法の提案を発表している[157]

既存薬探索 

中国での探索研究 

2020年1月25日、中国の20以上の機関からなる研究グループは、有効な可能性のある薬剤等のスクリーニング(探索)を行った結果、候補物質30種類を発見したと発表した[158]。そのリストには、インジナビルサキナビルロピナビルカルフィルゾミブリトナビル、その他12の抗HIV薬、また、サンズコン(山豆根)などの漢方薬イタドリ(虎杖)などの天然物も含まれている。

1月29日、中国科学院(CAS)の軍事医学科学院および武漢病毒研究所(WIV)の共同研究により、本ウイルス阻害効果がまずまずよい(fairly good)既存薬を3種類発見したと報道された[159]

すなわち、RNAポリメラーゼ阻害剤レムデシビル[160][161][162][163]クロロキン および リトナビル である。それらは臨床使用承認申請手続中と述べた。

そのレムデシビル、また、I型インターフェロンロシアの抗ウイルス剤トリアザビリン(Triazavirin英語版[164][165]の試験はその時期に始まった。

北欧での探索研究 

Petter I. Andersen(ノルウェー科学技術大学(NTNU))らは、人体に対して安全で薬効範囲の広い120種類の抗ウイルス薬からなるデータベースを作成し、本ウイルス疾患の治療に有効な可能性のある31種類の薬剤をピックアップしている (2020年2月12日第6版)。

その中に以下の薬剤名が例示され「2019-nCoV(現名称 SARS-CoV-2)の処方に目的変更(repurposing[166])が可能かもしれない」とある(詳細は原文[167]参照):

—  preprints.org、 DOI 10.20944/preprints201910.0144.v6

 

韓国での探索研究 

2020年3月2日、韓国パスツール研究所などのチームは、FDA承認薬と生物活性分子を含む5,406個の化合物の中から、MERSコロナウイルスの臨床分離株を用いスクリーニングを行ってCOVID-19を含む広範囲のコロナウイルスに効く薬の候補を絞れたとbioRxivで報告した(※ 未査読論文)[174][175](PDF)。その中で以下の、12個のFDA承認薬と6個の生理活性物質が示された。

 

 

 

 

  • 生理活性物質6種類:Emetine dihydrochloride, Oxyclozanide, Cycloheximide, Lanatoside C, Calcimycin, Digitoxigenin

 

— bioRxivScreening of FDA-approved drugs using a MERS-CoV clinical isolate from South Korea identifies potential therapeutic options for COVID-19

この中に、同論文の表1にランクインし治癒指数T1が6.1以上と記載されたシクレソニドは、2020年2月、日本で3例で処方が試されて著効を上げたシクレソニド(→ #シクレソニド (吸入ステロイド喘息治療薬))。シクレソニドは、実験の結果、ウイルスのライフサイクルの初期ステージ(原文では「early stage (pre-entry)」)で働いていることが分かった。シクレソニドのターゲットはグルココルチコイドリガンドと推定されている。

この論文では、治癒指数T1が非常に大きい強心配糖体類が特に有望としている。

カレトラ:ロピナビル・リトナビル(抗HIV薬;プロテアーゼ阻害剤)の合剤 

ロピナビルリトナビル(合剤名 カレトラ®配合錠)(Kaletra)(略称 LPV/r)は、上記のように中国での初期の治療から広く用いられている(→ #中国での探索研究)。ロピナビルとリトナビルはどちらもHIV感染症に対するHAART療法に用いられ、プロテアーゼを阻害する作用を持つ。2020年2月26日の日本感染症学会の文書でも、現時点で日本での入手可能性や有害事象等の観点を考慮した抗ウイルス薬の選択肢として、筆頭に名前が上がっている[177]

2月10日、上海市公共卫生临床中心(中国語版)の 陈军凌云(Chen Jun LY)らは、「新型コロナウイルス肺炎の治療における、ロピナビルリトナビルおよびアビドルの有効性」(直訳)という報告を行った[178]。134症例中52例が経口LPV/r治療、34例は経口 アビドール治療、残り48例は抗ウイルス薬を不使用(なお、全例でインターフェロン-α2b スプレーと対症療法は実施)。研究の結果、両方の薬剤とも、症状緩和の効果もウイルス除去促進の効果も見つからず、有効性についてさらなる調査が必要と結論づけている。

3月3日、杏林大学医学部付属病院のグループは、症例報告「COVID-19肺炎の2症例:クルーズ船内感染例および市中感染例」で、「症例2」の場合にLPV/rを投与しても呼吸状態が増悪したことを説明し、上記報告書を引いて、「LPV/r は中国からの報告ではウイルス量の低下、症状の改善には影響を与えておらず[178]、COVID-19肺炎への過度な期待は難しいと考えられる。」と考察した[179]

3月3日、国際医療福祉大学熱海病院のチームは、症例報告「ロピナビル・リトナビルで治療した新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)の症例報告」で、無症状から高熱と肺炎に増悪した患者に LPV/r を投与して治療を行ったところ、投与から2日後に解熱など好転し、入院後20日間でPCR検査が陰性化し退院したことを報告した[180]。「本例に限って言えばカレトラは好意的に評価できる。酸素化低下などの重症化の徴候を待たず、肺炎の診断を得た時点で早期に治療介入を行うことで、重症化の阻止、致命率の低下ができるかもしれない」と考察している。

3月10日、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院のグループは、症例報告「ロピナビル/リトナビル合剤が有効であったと考えられたCOVID-19関連肺炎の一例」で、入院4日目に低酸素血症と全身倦怠感の増悪があり急性肺傷害に移行する懸念があった患者にLPV/rを投与したところ、投与2日目には解熱鎮痛薬なしでも発熱しない状態になったと報告した[181]。これは、有効性の高い対象症例であった可能性と、投与時期が的確であった可能性があると考察している。

アビドル(鎮痛剤)とダルナビル(抗HIV薬) 

2020年2月4日、浙江大学教授李蘭娟の研究チームは、細胞実験で、アビドル(Abidol)とダルナビルDarunavir)の2種類の薬剤がコロナウイルスを効果的に阻害するのに有効であると発表した[182]。この報道により欧米株が急上昇した[183]

  • 李教授によれば、前臨床試験(preliminary tests)の in vitro 細胞実験で、アビドル(Abidol)[184]ダルナビルDarunavir)の2種類の薬剤がこのウイルスを阻害するのに有効であることが分かった。
  • 李教授は、新たに感染した患者の緊急治療を強化しようという望みをかけて、中国東部の浙江省から中国中央の湖北省に医療従事者を連れてきた。
  • 李教授は、現在使用されている 抗HIVロピナビルリトナビル錠(商品名 Kelizhi[185])(上記カレトラと同種類の薬剤)はあまり大きな効果はなく、しかも副作用(複数)があると述べた。
  • 李教授は、2つの新薬を、コロナウイルスによる新型肺炎国家衛生健康委員会の治療プログラムに含めることを推奨した。
  • チームの別の研究者、陳作炳(Chen Zuobing)は、2つの薬は医学的指導なしに服用すべきではない、と釘をさした。
  • 浙江大学医学院附属第一医院の副理事長 (deputy president ) でもある陳作炳は、この2つの薬は浙江省でこのウイルスに感染した患者たちの治療に使用されてきており、次の段階で、有効性で劣っているほかの薬に取って代わるだろうと述べた[182]

上に記載されているアビドルとは、オピオイド系の鎮痛剤トラマドールの派生物と同じ成分である[186]。また、ダルナビルは抗HIV[187]

アルビア (抗HIV薬) 

米製薬会社アッヴィは2020年1月26日、中国保健当局からの要請で抗HIV薬 アルビア英語版(商品名)を試験的に使用していることを明らかにした[155]。アルビアは上記カレトラ(商品名)と同じ成分の配合錠のひとつで、冷蔵不要という特徴がある[188]

リトナビル (抗HIV薬)等とオセルタミビル (抗インフルエンザ薬)の併用 

タイ保健省は2020年2月2日、治療法を見つけたと以下のように発表した。

バンコクの病院で中国人女性旅行客(70代)の患者に抗HIV薬 リトナビルおよびロピナビル(これら合剤の商品名カレトラ)、ならびに抗インフルエンザオセルタミビル (oseltamivir)(商品名 タミフル等)を混合して投与した。

10日に渡って症状が悪化し続けていた重症患者であったが、投与後48時間以内にコロナウイルスが消失した[189][190][191]

一方、2月4日、浙江大学教授李蘭娟研究チームはロピナビルとリトナビルは大きな効果はなく、しかも副作用があると述べた[182]。(→#アビドルとダルナビル)

レムデシビル (抗エボラ出血熱薬) 

2020年1月23日、米国の製薬大手ギリアド・サイエンシズは、エボラ出血熱治療の実験薬 レムデシビル(開発コード GS-5734)[192]がこの治療で有効かどうかを検証中であると表明した[193]。レムデシビルはコンゴエボラ出血熱の治療法を緊急に見い出すために2019年に精力的に臨床試験が行われていた4種類の薬剤のうちのひとつで、試験の結果、エボラ出血熱の患者生存率改善効果を示した[194]

1月31日の、米ワシントン州2019-nCoV症例調査チーム[195]の報告[196]「2019年の新規コロナウイルスの米国での最初の症例」(直訳)によれば、以下のように上記レムデシビルの効果があったという。

1月15日に武漢を訪ね米国に戻った男性(35)の症例では、咳と発熱があり検査後自宅隔離。

1月20日新型コロナウイルス陽性で入院。発病9日めから肺炎症状で酸素飽和度は90%に低下し酸素補給。

10日めには基底の筋状混濁や両肺のラ音[注 5]を認め非定型肺炎の所見となりバンコマイシンセフェピムの投与を開始した。

11日め夕方から、コンパッショネート使用(未承認薬の人道的使用)としてレムデシビル静脈注射を行い他の薬剤を順次停止。

翌日状態が改善し食欲が出て、酸素補給なしに酸素飽和度96%に落ち着いた。

軽い咳を除きすべての症状が解消した。

2月2日、中国当局にレムデシビルの臨床試験申請が受理された。さっそく2月3日には北京中日友好医院により武漢臨床試験が開始された[197]。軽・中等度の肺炎を発症した患者のうち最大270人が無作為に選ばれ、二重盲検プラセボ対照の試験に参加[198]。同年4月に結果が出る予定[199]

同社は進行中の臨床試験外の緊急治療(コンパッショネート使用)を目的にレムデシビルを提供している。日本国内でも2月22日、加藤勝信厚生労働大臣が、患者に対し2月中にもレムデシビルの投与を開始し、3月にもレムデシビルの承認を目指した臨床試験を始める考えを示した[200][201]

中国を視察した世界保健機関WHO)の担当者が24日、レムデシビルは「現時点で本当に治療効果があるとみられる唯一の薬」と発言した[202]。ある製薬会社担当者の意見では「緊急性を考えて特例扱いだとしても、最短でも2020年内の承認だろう」という。

2月26日、ギリアド・サイエンシズは、レムデシビルのふたつの第III相試験の治験届がFDAに受理されたと発表した[199][203]。この治験で、世界各国から重度約400人、中等度約600人の被験者で3月にも開始し、順調なら4月にも結果が出る[200]。3月11日、数百人のCOVID-19患者が本剤で治療を受けた[204][205]。米厚生省はその前週、日本の重症患者に未承認薬のコンパッショネート使用の一環としてレムデシビルを提供するため、同省公衆衛生局士官部隊が、在日米国大使館、日本の厚生労働省、ギリアドと協力していると発表している。

テルミサルタン、ロサルタンなど降圧剤併用 

新型コロナウイルス感染症の患者の血漿では著しく高いレベルのアンジオテンシンIIが確認されており[206]、それによる障害を防ぐためにアンジオテンシンII受容体拮抗薬 (ARB) を使うことがインドマハラシュトラ保健大学の Mrudula Phadke 教授から提案された[206][207]#宿主細胞受容体も参照)。ARBにはテルミサルタンロサルタンなどがある[207]

欧州製薬団体連合会英語版 (EFPIA)は、降圧剤であるアンジオテンシンII生成を阻害するアンジオテンシン変換酵素阻害薬 (ACE阻害剤) の効果の検証を含む治療法の特定を、会員企業に求めている[208]

また、マウスでの動物実験においてアンジオテンシンIIの分解を行うリコンビナント(組み換え)ACE2の投与はSARSの重症化を防ぐことが見つかっている[209]。日本の医薬基盤・健康・栄養研究所は量産可能なバクテリア由来のACE2酵素を発見し、それが新型コロナウイルス患者の重症化抑制に使える可能性のあることを発表した[210][211]

リン酸クロロキン (抗マラリア薬)・アルビドール (抗インフルエンザ薬)・完治患者の血漿 

2020年2月18日、中国政府の専門家チームは、本ウイルスの診療ガイドラインを新たに発表した[104]。これまで効果的な治療法はないとしていたが、今回、抗マラリア薬の「リン酸クロロキン」と抗インフルエンザ薬の「アルビドール」を治療薬として加えた。このうちリン酸クロロキンは「特効薬ではないが検討に値する」、また、「ウイルス検査で陰性になるのが早いほか、副作用も大きくない」という。北京市広東省などの病院に入院する患者に対する臨床試験で症状の改善を確認した。15日に開いた国内の専門家会議で、臨床試験の対象を拡大することで一致したという[212][213]

さらに同チームは、危険な状態や重症の患者に対して、完治した人の血漿(けっしょう)を治療に使うことを勧めた[104]

漢方薬 (清肺排毒湯) 

2020年1月27日、中国国家中医薬管理局は本疾患の予防と治療のための中医薬(漢方薬)の効果的処方を発見するための臨床研究を開始し[214]山西省河北省黒竜江省陝西省漢方薬清肺排毒湯(中国語 清肺排毒汤)での治療の臨床的観察とデータ分析を行った。臨床的に有効なデータ214件により、2月6日、国家衛生健康委員会と国家中医薬管理局は共同で全国に、清肺排毒湯の使用を勧告する文書を発行した。発表されている効果は以下のとおり。

2月19日の中国国家中医薬管理局の発表[215]によると、10省57指定医療機関で701例を投与して観察した結果、130例(19%)が治癒して退院、51例(7%)が症状が消失し、268例(38%)で症状が改善し、212例(30%)は症状が安定し悪化しなかったという[215]

そのうち351症例が詳しく分析され、うち112人の患者の体温が37.3°Cを超えていたところ、服薬1日後で51.8%、服薬6日後で94.6%の患者が平熱に戻り、また、咳症状214人のうち46.7%が服用して短期に改善した[216]

また、だるさや吐き気、のどの痛みなどの症状にも顕著な治療効果が見られた。351例の中でひとりも、軽度の患者も普通の患者は重篤にはなっていないという[217]

効果100%ではないものの約半数以上の改善がみられることから、中国国家衛生健康委員会と国家中医薬管理局は2月6日、清肺排毒湯の使用を推奨するむね中国全土に通達した[218]

2月19日付、国民健康衛生委員会発行の「新型コロナウイルス肺炎の診断と治療(試行6版)」[219]とその解説[220][221][222]によれば、以下のとおり。

一般的な処方“清肺排毒湯”は臨床治療期間中に推奨される。軽度、一般的、重度、重大、および回復期間の臨床症状がえられた。推奨される処方と投与量、および投与方法は、3つの側面から説明されている。

2月21日の中国国務院の記者会見で、全国6万例以上の症例で西洋医学漢方薬を併用して結果良好と以下のように発表された。

漢方薬の併用により、臨床症状が消えるまでが2日間短縮、平熱への解熱が1.7日間短縮、入院日数は2.2日間短縮、CT画像は22%改善され、臨床治癒率はが33%改善、重症化率は27.4%減少、リンパ球は70%増加したという[223]

清肺排毒湯を処方された患者たちのインタビューが2月23日に記事になり国家中医薬管理局のサイトに掲載された[224]

なお、日本では、漢方薬中医薬を同じものだと認識しているが、中国当局は、漢方薬中医薬は厳密には別の物であると認識しているため留意が必要である。

ファビピラビル (アビガン) (抗インフルエンザ薬) 

概要 

ファビピラビル(アビガン)は富士フイルム富山化学が開発し、「浙江海正薬業股份有限公司(Zhejiang Hisun Pharmaceutical)」社に2016年に中国におけるライセンスを導出済[225]。アビガンは、神奈川県特区で7年前(2013年)からフジフイルム新型インフルエンザの特効薬として開発と国際展開に協力してきた薬剤である[226]。中国ではCOVID-19に対する治療選択肢の1つとして挙げられており、有効であることが証明された[227]。日本でもCOVID-19に対する治験が計画されている[228][229]

時系列 

2020年1月28日時点で、開発元の富士フイルム富山化学は本ウイルスに効果があるかどうかの検証に取り組んでいない[230]

2020年2月18日の報道によれば、抗インフルエンザ薬ファビピラビル(商品名 アビガン錠; 中国語製品名 法維拉韋)[231]が中国の国家薬監局から販売許可を得た[232]

中国の科学技術部の15日の発表によると、ファビピラビルは現在、COVID-19の治療の臨床試験で使われている[233]薬のうちのひとつである。比較的高い治療効果と副作用が少ないことを示しているとされる(治験番号 ChiCTR2000029548[234]注意:本剤は動物実験において初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、使用にあたっては男性女性にかかわらず注意事項厳守が必要である。[231]

2月22日、加藤勝信厚生労働大臣読売テレビの番組の中で、「アビガンが効くということになれば、全国に展開をして治療に使っていきたい」、「効果があると考えられている他の治療薬の使用も並行して考えていく」と述べた[235][236]。アビガンは新型インフルエンザ治療薬として日本国内で製造され、約200万人分が備蓄されている。政府関係者によると、中国で本ウイルスへの効果が確認されているという。アビガンの人道的使用臨床試験の早期開始を国に提言したのは自身であると黒岩祐治神奈川県知事が2月23日に表明した[237][238]

2月22日から日本国内のひとつの医療機関で、本疾患の患者にアビガンの投与が始まった[201]

3月17日、中国政府はアビガンがウイルス排出期間を短縮し、X線画像の改善率を高め、さらに安全性にも問題がなかったと発表した[227]

シクレソニド (吸入ステロイド、喘息治療薬) 

概要 

シクレソニドは気管支喘息に用いられる吸入ステロイド薬であり、帝人の100%子会社である製薬会社帝人ファーマが2007年から販売している[239][240]。米国ではOmnaris, Alvesco および Zettona (いずれも、本社がオランダの Covis Pharma[176]社製)の商品名で販売されている。同薬は、基礎実験においてSARS-CoV-2に対する抗ウイルス効果が示された。他の吸入ステロイドには同様の抗ウイルス効果が見られず、シクレソニド特有の作用と考えられた。本知見をもとに3例のCOVID-19患者に投与したところ改善効果がみられた。現在さらなる症例の集積が行われている[241][242]

国立感染症研究所の審査前論文によればこの効果はシクレソニドがウイルス側タンパク質のNSP15に作用してウイルスのRNA複製を抑制することによるものと見られている[243]

時系列 

2020年2月19日、国立感染症研究所村山庁舎のコロナウイルス研究室は、「新型コロナウイルス感染症への対応に関する緊急拡大対策会議」で次のことを紹介した。

本ウイルスに対し既存の気管支喘息(ぜんそく)治療用の吸入ステロイド薬「シクレソニド」(Ciclesonide(英語版)[244](商品名 オルベスコ[245])が強い抗ウイルス活性を有する。

これを参考に神奈川県立足柄上病院のチームは、重症化のおそれがあり治療が難航していたCOVID-19患者3名への投与治療をすぐに行った。その結果、3例とも2日ほどで状態が好転、という著しい効果があった

3月2日、その症例報告を日本感染症学会サイトで以下内容で発表し[241][242]、多くのニュース番組等で紹介された。

  • クルーズ船ダイヤモンドプリセンセス号」に乗り合わせたCOVID-19陽性者で、肺炎が増悪中の患者3名にシクレソニドを投与したところ、良好な結果が得られた。うち2例は咽頭ぬぐいPCR検査でまだ陽性のため、吸入量を増量して継続中。
  • COVID-19は(多くの報告のとおり)初期が軽症でも発症後7-10日で急速に悪化する印象。シクレソニドの投与時期は、重症化する前の、感染早期〜中期あるいは肺炎初期が望ましい。
  • ウイルスの早期陰性化重症肺炎への進展防止効果が期待される。
  • 本ウイルスが肺胞上皮細胞で増殖し、肺障害を引き起こしながら、同時に肺胞マクロファージ等に感染し局所の炎症を起こすと推定され、それに対しシクレソニドの持つ抗ウイルス作用と抗炎症作用が、重症化しつつある肺傷害の治療に有効であることが期待されている。
  • COVID-19に対し広く投与されているロピナビルリトナビル(カレトラ錠)(略号 LPV/r)[246]対シクレソニドの比較
  1. in vitro試験管レベルでの研究)でウイルス増殖防止効果は同等以上、
  2. 肺胞到達時の組織濃度は数十倍、
  3. 副作用は前者が「下痢,吐き気,嘔吐,腹痛等」で高齢者における薬物動態については十分な検討がなされていない[246]。後者は添付文書に副作用の記載はあるが、未熟児・新生児から高齢者まで広く用いられる安全な薬剤で、報告時点までで同院で有害事象はなかった。
  4. 価格は前者が 1,289.6円/日、後者は1キット2,169円(同院の1,200μg/日処方で)と安価。
  • この3例のみの症例数で効果を論じることはできないので、今後症例の蓄積と検討が望まれる。
— 日本感染症学会COVID-19肺炎初期~中期にシクレソニド吸入を使用し改善した3例

3月2日に韓国パスツール研究所などのチームが発表(→ #韓国での探索研究)したCOVID-19有効薬剤候補の中にも、本剤シクレソニドが含まれていた。候補はMERSコロナウイルス株を使ったスクリーニング研究で得られたもの。

3月6日、国立感染症研究所は、上記3症例について「シクレソニドが、ウイルスの遺伝情報を担うリボ核酸(RNA)の複製を阻害した」との見方を示した。また、MERSで抗ウイルス作用を示したとのデータがあったと述べた[247]

3月9日に厚生労働省健康局結核感染症課より要請を受け、帝人ファーマと親会社の帝人は翌10日、COVID-19治療薬の検討に資するべく、同社が製造販売承認を有するオルベスコの供給体制を(本剤使用中の気管支喘息患者への安定供給を確保した上で)確保すると発表した[248][249]。同社が要請されたのはオルベスコ2万本分の確保。いつまでに出荷という期限は設けられていない。オルベスコは海外のメーカーから導入していて帝人の一存では増産できないが、メーカーと協議しながら数量を確保していく[250]

3月10日、日本環境感染学会(会員数約1万名)は、「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第2版改訂版 ver.2.1)」を公開し[251]、治療に関する説明の中に、3月2日の前版にはなかった本剤に関する記載を追加した(下線部)[252]

治療・予防(ワクチン) 新型コロナウイルス感染症(COVID- 19) に対して、現在、有効性が証明された治療法はありません。ただし、抗HIV薬のロピナビル/リトナビル、抗インフルエンザ薬のアビガン、エボラ出血熱の治療薬として開発されたレムデシビル、および吸入ステロイドの喘息治療薬であるシクレソニドなどが治療薬の候補として挙がっており、今後の検証によって効果が証明されれば治療薬として用いられる可能性があると思われます。

— 日本環境感染学会医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第2版改訂版 ver.2.1)

ヒドロキシクロロキン(全身性エリテマトーデス治療薬) 

ヒドロキシクロロキンは全身性エリテマトーデス治療薬として承認されている。日本でCOVID-19患者2例に投与し、有効であったと報告されている[253]

カモスタットおよびナファモスタット (セリンプロテアーゼ阻害剤) 

ドイツの研究によればセリンプロテアーゼ阻害剤のカモスタットはin vitroにおいてSARS-CoV-2が細胞へと侵入する際に使われる宿主側酵素のTMPRSS2プロテアーゼを阻害するため、新型コロナウイルスに効果のある可能性がある[254][255]SARSコロナウイルスでは動物実験においてカモスタット単独投与の効果が確認されており[256]、その用量をヒトに当てはめると日本で既に承認されている量でも効果のある可能性がある[257]東京大学大学院医学系研究科新型コロナウイルス感染症患者に対するカモスタット投与の臨床研究を計画している[258]

また中国の研究によればセリンプロテアーゼ阻害剤のナファモスタットVero E6細胞においてSARS-CoV-2の感染を防いだものの、その50%効果濃度 (EC50値) は高めの22.50μMとなっている[259]東京大学医科学研究所新型コロナウイルス患者に対しナファモスタットの試験投与を行う予定となっている[260]

日本ではカモスタットは慢性膵炎や術後逆流性食道炎に、ナファモスタットは膵炎や播種性血管内凝固症候群などに対して保険適用されている[261][262]

トシリズマブ (抗関節炎剤) 

2020年3月4日、中華人民共和国国家衛生健康委員会は強力なIL-6阻害薬であるトシリズマブ中外製薬アクテムラ[263])のCOVID-19患者に対する投与を認可し[264]、医療規定の標準治療に組み込んだ[265]

イタリアにおいても重度の新型コロナウイルス患者2人に対しトシリズマブの投与が行われ、これにより24時間で症状が改善した[266]。この投与は在コッリ病院会社イタリア語版及びIRCCS財団国立がん研究所イタリア語版の協力によってコトゥーニョ病院イタリア語版の患者に対し行われた[266]

カリウム補充療法 

審査前論文ではあるものの中国温州の病院の報告によれば、多くのCOVID-19患者が尿からのカリウムイオン (K+) 排出によって軽度〜重度の低カリウム血症を起こしており、カリウム補充療法は回復傾向の患者で良い反応を示したとされる[267]。なおSARSにおいても低カリウム血症が報告されていた[268]

酸水素混合吸入 

酸水素混合吸入は中国においてCOVID-19の治療に使われている[269][270]

2020年2月5日、上海潓美医療科技の酸水素吸入器 (水素66.66%/酸素33.33%) が武漢中央病院武漢大学中南医院中国語版などの病院へと届けられ、使用されるようになった[269]。この酸水素吸入器は慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、喘息気管支拡張症、気道狭窄などに向けて開発されていた[269]

2月17日、中国非公立医療機構協会 (CNMIA)がこの酸水素吸入器を推奨し[269][271]、3月3日、中華人民共和国国家衛生健康委員会(NHC)はガイドライン第七版で酸水素吸入器を標準治療に組み込んだ[270][265]。ただし二重盲検比較試験は行われておらず論争も起きている[269][270]

新規治療薬、予防薬の開発 

この節の加筆が望まれています。

感染症の感染拡大を受けて、

  1. 抗原投与による予防薬であるワクチン、および、
  2. 抗体投与による予防薬または治療薬である抗体医薬

などを緊急に開発しようという取り組みが複数はじまった。

ワクチンの開発 

ノババックス社 

2020年1月21日、米国の感染症薬メーカー、ノババックス (Novavax Inc.) は、本ウイルスの感染予防のためのワクチンの開発をはじめたと語った[272][273]

CEPI、モデルナ社、イノビオ社、クインズランド大学、グラクソ・スミスクライン 

2020年1月23日、感染症流行対策イノベーション連合 (CEPI; Coalition for Epidemic Preparedness Innovations)は23日、以下3研究チームがワクチン開発に向けた作業を開始し、少なくとも1種類のワクチンの臨床試験を6月までに開始する計画と発表した[274]

  1. 米医薬品・ワクチン開発のモデルナ(Moderna, Inc.)(英語) (MRNA.O)とアメリカ国立アレルギー・感染症研究所 (NIAID)の連携、
  2. 製薬会社イノビオ・ファーマシューティカルズ(Inovio Pharmaceuticals, Inc.) (INO.O)、
  3. クイーンズランド大学のチーム。

1月23日のニュース[275]によれば、米Vir Biotechnology社もワクチン開発計画に加わり、SARSMERSの生存者から同定されたモノクローナル抗体(mAbs)が本ウイルスに有効かどうか調べている。

1月24日、日本の厚生労働省は、同省が創設に関わり2017年より拠出を行っている相手であるCEPIが、上記3者とパートナーシップを締結した、ということを「新型コロナウイルスに対するワクチン開発を進めます 」という題名で発表した[276]時事通信の記事によれば「承認は、早ければ年内」[277]

CEPIはノルウェー政府、インド政府、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、および公益信託団体ウェルカム・トラストの出資によって2017年にダボス会議(スイス)にて発足した、公的機関、民間機関、慈善団体および市民団体の間でのグローバルな協働体である[278]

イノビオは医薬品の研究開発会社で、MERSの最も先進的なワクチン候補 INO-4700をもっている[279]。CEPIの全額資金提供により2020年にINO-4700の中東アフリカ現地での第II相臨床試験に入る予定[280]。イノビオは1月23日、CEPIから最大900万ドル(約9億8000万円)の助成金を受けたことを明らかにした[281]

ウイルスのDNA塩基配列が公表されたことで、イノビオは3時間以内にウイルスをデザインできたという。新ワクチン INO-4800 の臨床試験は、2020年初夏にも始まる計画で、より大規模な臨床試験は年末までに、理想的には中国で、行いたいという[282]

グラクソ・スミスクライン(GSK)は2月3日、ワクチン開発を加速させるため、パンデミックワクチンで確立されたアジュバント(抗原性補強剤)の基盤技術を提供するためにCEPIの協働に参加すると発表した[283]

2月25日、上記モデルナは開発中のCOVID-19のワクチンを、ヒトに投与する安全性試験(第I相試験)向けに米国立衛生研究所NIH)傘下の国立アレルギー感染症研究所NIAID)に出荷した。ヒトへの臨床試験は2カ月以内の開始を見込むが、一般に入手できるようになるには1年半かかる可能性があるという[284]

中国・ロシア 

中国CDC(疾病管理予防センター)の関係者は、ワクチンの開発を開始したと2020年1月26日に語った[285] 。

1月29日、広州ロシア領事館新型コロナウイルスのゲノムが中国からロシアに提供され、中露がワクチンの共同開発に着手したと発表した[286]

(上記と同じものかどうかは分からないが)開発したワクチンの治験開始が3月17日に承認され、同じ週から中国人民解放軍軍事科学院の研究者らが治験を開始[287]

ジョンソン・エンド・ジョンソン 

2020年1月29日、米医薬品・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、COVID-19 ワクチンの開発に着手したと発表した。エボラ出血熱のワクチン開発に利用した技術を応用する。このワクチンは現在、コンゴ民主共和国ルワンダで投与されている[193]。「すでに多数の研究者をワクチン開発に投入しており、1ヶ月以内には何らかの成果が出せると確信している。世界市場に向けた量産体制はすでに整っているので、ワクチンが完成すれば、1年以内に億単位の出荷が可能」という[288]

サノフィ社 

2020年2月18日、フランスのサノフィは、米国保健福祉省(HHS)の生物医学先端研究開発局(BARDA)と協力して、COVID-19 のための遺伝子組換えワクチンの速やかな開発を目指すと発表した[289]

アンジェス大阪大学タカラバイオ 

2020年3月5日、大阪大学発の創薬企業アンジェスは、本ウイルスのワクチンを大阪大学と共同で開発し、タカラバイオが製造すると発表した[290]